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英語とか教育とか読書録とか

サラ・マーサー、ゾルタン・ドルニェイ(鈴木章能、和田玲訳)「外国語学習者エンゲージメント: 主体的学びを引き出す英語授業」アルク選書

 

本書は、第二言語習得(Second Language Acquisition: SLA)における動機づけ研究の第一人者Sarah MercerとZoltán Dörnyeiの共著、Engaging Language Learners in Contemporary Classrooms eBooks.com eBook (English Edition)を翻訳したもの。

「主体的・対話的で深い学び」を掲げる現代の日本の教育課程において、「エンゲージメント」(engagement)は「動機づけ」(motivation)と並ぶ重要な概念として、今後様々な場面で見られるようになるかもしれない。

エンゲージメントは「認知的・感情的関与といった内的側面と組み合わさった行動(action)」(p.13)と定義される。

簡単に言えば、エンゲージメントとは、集中して(あるいは夢中になって)何かに取り組むことを指す。

本書では「授業において生徒のエンゲージメントをいかに実現させるか」をテーマに、これまでの動機づけ研究で得られた理論的・実践的な知見がまとめられている。その例として以下のようなものがある。

学習者のやる気を鼓舞して、学びにエンゲージするように動機づけるために、教師にできる最も実践的な取り組みの一つは、学習者の進歩を目に見えるようにすることだ。言語学習は、徐々に前進していくものであるため、教師にも学習者にもその成果は把握しにくい。学習者の有能感を高めるには、学習者が自分の進歩を目で見て、自分の努力は報われていると認識できるようにする必要がある。(p.65)

そのように述べた上で、「イグジット・チケット」や「ポートフォリオ」など、学びの可視化を実践するためのより具体的な方法・ツールも提示している。

英語の授業づくりを進めていく上で手元にあったら役立つ一冊。

ちなみに、個人的に印象に残ったのが以下の指摘。

基本的に、教師の生理学的状態と感情は、学習者に「伝染する」。簡単に言えば、教師が自分の授業やその他の仕事に没頭し、情熱を傾けていれば、学習者もそうなる可能性が高くなるのだ。(p.89)

これすなわち、教師のやる気は生徒に伝染するということ。

これは実感としてもそう思うし、逆に生徒たちがやる気だと、こっちも嬉しくなってスーパーやる気マンになる(我ながら単純(笑))。

授業における教師の重要な役割のひとつは、当然ただ教えることだけでなく、生徒たちを「動機づける」ことで、彼ら・彼女らがプレイヤーとして学習に対して「エンゲージ」できるようにすること。

したがって、いかに最初に生徒たちを動機づけられるかがキーになる。

そのためには、生徒たちにやる気を伝染させる"good enough motivator"(p.149)として、こちらもやる気を出さないわけにはいきませんね。

AS