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英語とか教育とか読書録とか

宮本輝「三十光年の星たち」(上・下)新潮文庫

記念すべき(?)1回目の読書録。

大学院生のころに古本屋で購入してからワインの如くずっと本棚で眠らせたままだったけど(5、6年くらい?)、満を持して手にしてみたら思ったよりも丁度いい読み時だった。

若者に対する厳しくも温かい金言で溢れたバイブル的な小説となっている本書。

とりわけ職人的に生きること、つまり自分自身と自分の腕(能力)を一心に磨き続ける生き方について、佐伯老人というメンターの下で主人公と一緒に考えることができた。

エッセイ集「血の騒ぎを聴け (新潮文庫)」も、本書の土台にある作者・宮本輝さんの思いや考えの一端を知ることができるので、一読の価値アリ。

氏曰く、「世の中のありとあらゆる分野において、勝負を決するのは、人間としての深さ、強さ、大きさだ。鍛えられた本物の人物になるには三十年かかる。」(三十光年の星たち(下)(新潮文庫), p.138)とのことなので、まだまだ浅学非才の自分は今から三十年後(59歳か・・・)を見据えて頑張りたいと思います。

正直内容の古臭さは否めないけど、これからの自分の人生を支える"添え木"(となる言葉)を手にしたいと思っている人にはオススメ。

人間には何らかの支えが必要だ。とりわけ若い人は、有形無形の支えを得て、難破船とならずに嵐をくぐり抜ける時期が必ずある。だが、いまのこのけちくさい世の中は、若者という苗木に対してあまりに冷淡で、わずかな添え木すら惜しんでいるかに見える。

私は「三十光年の星たち」で、その苗木と添え木を書いたつもりである。

あとがき(三十光年の星たち(下) (新潮文庫), p.326)より

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